FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第56回】
【第56回】2024年にも相続登記の義務化スタート 〜施行日前の相続登記にも適用〜
2021年6月30日
FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第56回目のコラムは、4月21日に国会で改正案※が成立した「相続登記の義務化」等に関するお話です。
- ※民法等の一部を改正する法律案、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案
いよいよ始まる「相続登記の義務化」
親等が亡くなり、相続人が不動産を相続したときに名義変更することを「相続登記」といいます。現在「相続登記」には期限の定めがなく、義務もありません。そのため相続登記を放置する人が増え、その結果、現在の所有者が不明な土地(所有者不明土地)が九州の面積を上回る規模になってしまったといわれています。この問題を解消するために今回の改正で「相続登記」が義務化されることになりました。
「相続登記」は相続開始から3年以内、正当な理由なく怠った場合は過料
「相続登記」は相続開始から3年以内に手続きすることが義務付けられます。(遺言で財産を譲り受けた場合も含む。)この法律は、公布日である2021年4月28日から3年以内に施行されることになっており、2024年にも開始される予定です。この改正で注意すべき点は、施行日前に発生した相続登記についても対象にしているということです。つまり先祖代々の土地で何代も相続登記がなされずに今や対象となる相続人が増えすぎて誰が相続人かも正直わからないという土地についても3年以内に手続きすることが必要となります(施行日が2024年の場合、2027年までに手続きが必要)。なお、この手続きを正当な理由なく怠った場合は、10万円以下の過料を科す、とされています。
相続人のうちの一人の届け出で登記義務完了
義務化なんて言われても、今更相続人全員で分割協議なんて不可能、という方もいらっしゃるかと思います。そのため今回の改正では、相続人のうちの一人が相続人であることを法務局の登記官に申し出ることで登記義務を履行したものとみなしてもらえる「相続人申告登記制度」が新設されます( 2021年4月28日から3年以内に施行)。ただし、「相続人申告登記制度」の利用後、遺産分割によって所有権を取得したときは、改めて分割の日から3年以内に所有権移転登記が必要となります。3年以内に分割協議が整いそうもないという場合には、まずはこの制度を利用して申し出るということを忘れないようにしましょう。
不要な土地は法務局による審査の上、国へ
また今回の改正では、相続で取得したけれど利用価値が低い等の理由により相続人が望まない土地の放棄を認め国庫へ帰属させる制度も新設されます( 2021年4月28日から2年以内に施行)。ただし、無条件ではなく、建物が無い、担保権が設定されていない等のいくつかの条件と10年分の管理費用相当額の負担が求められるという点は注意が必要です。(共有地の場合、共有者全員で申請する必要があります。)
今から話し合いやご準備を
このように「所有者不明土地」問題解消に向けた各種制度はできました。しかし、一番重要なことは「所有者不明土地」問題を発生させる原因となる登記をする必要性を感じることができない不動産を相続人に相続させないということです。対応としては以下のことが考えられます。
まず最初に、保有している不動産を相続する人が本当に必要とするのか早いうちから話し合っておくことです。相続する人がすでに自宅を保有している場合、親の自宅は将来空き家となる可能性が高まります。相続人が空き家の固定資産税を払い続けるのも無駄であり、お世話になったご近所の方々は空き家を残されることで、景観悪化や犯罪の温床といった空き家問題で頭を悩ますことになるかもしれません。自分が亡くなった後にこのような事態を避けるためにも事前に話し合っておくことは必要なことだと思います。
次に、「遺言書」を作成することです。「遺言書」を作成することで、「だれに、何を、いくら」という自分の想いや考えを遺すことができ、かつ、不動産を巡って相続人間で争い(争族)が起こり、相続登記ができないという事態を未然に防ぐことができます。
また、権利関係がすでに複雑化していて自分だけで対応することが難しいという場合は、費用はかかりますが専門家に依頼することもご検討ください。何もしないまま次世代に引き継いでしまうと次世代ではさらに権利関係が複雑化するためより対応が困難となります。そのため自分の代でできるだけ問題を解消するように心がけることが大切です。
2024年の相続登記の義務化を前に、いざという時に備えて、保有している不動産を遺す方法について、ご検討いただくとともに、ご家族でもお話しをしてみてはいかがでしょうか。
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