FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第75回】
【第75回】相続人に認知症の方がいる場合の遺産分割
2024年12月27日
FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第75回目のコラムは、「相続人に認知症の方がいる場合の遺産分割」に関するお話です。
相続人の中に認知症の方がいると遺産分割は時間がかかる?
相続と聞くと、多くの方が「まだまだ先の話だ」と思われるかもしれません。しかし、実際には、元気なうちにしっかりと準備しておくことが大変重要です。相続は人生の一大事ですが、特に相続人の中に認知症の方がいる場合、その手続きは一層複雑になります。
認知症の相続人がいることで、遺産分割協議がスムーズに進まないことが多く、預貯金、有価証券や不動産などの相続手続きに時間がかかることがあります。
遺産分割協議が終了するまでの間、預貯金口座から自由に出金ができなくなるため、葬儀費用を相続財産から支払いたい場合や同居家族の生活費でお金が必要となった場合でも一定額を除いて払戻しすることができません。なお、相続税がかかる場合には、相続の発生から10か月が申告・納税の期限となります。期限までに遺産分割協議が整わないと、相続税を軽減できる各種特例などの適用を受けることや、相続税の納税資金の確保が難しくなることもあります。
遺産分割協議が困難になることも?
認知症の相続人は、意思・判断能力が低下しているため、自分自身で遺産分割協議に参加することができません。遺産分割協議を進めるためには、家庭裁判所への申立てにより選任された司法書士や弁護士などの成年後見人等が認知症となった相続人に代わって遺産分割協議を行うことになります。
例えば、配偶者が認知症となった場合、配偶者に代わって、成年後見人等が遺産分割協議に参加することで法的に有効な遺産分割協議を行うことが可能になりますが、成年後見人等は配偶者の権利である法定相続分を主張することになるため、相続人の間で意見の対立が生じた場合など、遺産分割協議が長引くばかりか、ご家族の絆が試される事態になることもあります。
成年後見人等の役割はあくまで認知症の相続人の利益を守ることにあります。
財産を遺す方の意思を反映させて不動産などの資産を特定の人に相続させることが出来なくなったり、二次相続(配偶者の相続)を見据えた相続税軽減効果を企図した柔軟な遺産配分が難しくなることも少なくありません。
元気なうちの準備が重要
このような問題を避けるためには、元気なうちの準備が重要です。特定の相続人に資産を承継する対策としては生前贈与や生命保険の活用などが考えられますが、遺言書の作成も検討されてはいかがでしょうか。
遺言書の効果としてあげられることは、自分の意思を明確に示し、家族が円滑に相続手続きを進められるようになることです。
遺言書があることで、遺産分割協議は不要となるため、スムーズな遺産分割手続きが実現可能となるばかりか、何よりも家族全員の安心につながります。
遺言書はご自身で作成することも可能ですが、形式に不備があると無効になるリスクや、紛失するリスクもあります。
そこで、遺言書を作成する際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
遺言書の内容が法的に有効であることを確認し、家族にとって最適な遺産配分を実現することが可能になります。
最後に
認知症の相続人がいる場合の遺産分割は、特に慎重な対応が求められます。
高齢になるほど認知症になる可能性が高まるため、元気なうちに遺言書を作成するなど、適切な準備を行うことで、家族が円滑に相続手続きを進められるようになります。
大切な家族のために、早めに準備を始めることが重要です。
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