FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第47回】
【第47回】義務化に向かう相続登記
2019年12月25日
FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第47回目のコラムは、「相続登記」に関するお話です。
相続時の登記漏れと所有者不明土地
親が亡くなり、子供が土地を相続したときは、不動産登記簿上の名義を書き換えることが原則となります。しかし、10か月以内に行わなければならない相続税申告とは異なり、相続登記には期限の定めがなく、義務でもないため、登記費用を支払ってまで、資産価値の低い土地を登記する必要性が感じられず、相続登記を怠る例が出てきています。
そうすると死亡した人が登記簿に残り続け、それが何世代も変更しないまま続いていくと、現在の所有者が誰なのかが特定できないという事態が起こります。
これが、いわゆる所有者不明土地の発生原因と考えられています。所有者不明土地は、九州を上回る規模との試算もあり、東日本大震災をはじめとする復興事業や公共事業の推進、防災・生活環境面、さらには固定資産税の徴収といった課税面などで大きな問題を生じさせています。
相続登記をしないリスク
では、手間と費用がかかる相続登記を行わないと、どのような問題が生じるでしょうか?
1つ目は、相続登記をしていない不動産は第三者に権利を主張できない、ということがあげられます。仮に子供のいない夫婦の夫※1が「自宅は妻に相続させる」という遺言を残していても、妻が相続登記をしていなければ、夫の弟が先に登記※2をすることができます。さらに、弟が持ち分を売却した場合、購入した第三者に対して妻は法定相続分を超える部分の権利を主張できない、という問題が生じます。
2つ目は、不動産を売却できない、ということがあげられます。不動産は、相続登記が終わらない限り売却することはできません。しかしながら、このときに相続人の誰かが認知症や、所在不明になっていたり、以前と気持ちが変わり再協議が必要になったりすると登記したいのに登記ができない、という問題が生じる可能性があります。
他にも不動産を担保にした融資を受けられないなどの問題が生じる可能性が考えられますが、最大の問題は、相続登記をしないまま相続人が亡くなってしまい2次相続、3次相続となって相続人の数がねずみ算式に増えていってしまうことです。遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますので、相続人の数が増えれば増えるほど、話し合いが難しく、登記が困難になると考えられます。
- ※1法定相続人及び法定相続分は妻(3/4)・夫の弟(1/4)とする
- ※2法定相続人であれば他の相続人の了承を得ずに単独で法定相続分の登記が可能
国の対策
最初に述べたように所有者不明土地が様々な問題を生じさせているため、国をあげてさまざまな対策が考えられています。
- 法律施行済
- 都道府県知事の判断で所有者不明土地を公共目的で使える仕組みを構築
- 登記官に調査権限を与え、所有者がわかれば登記官が登記を変更できる仕組みを構築
- 令和2年度税制改正大綱
- 一定の比較的価値の低い土地を対象として長期譲渡所得の金額(売却益)から最大100万円を控除
- 所有者が1人も明らかにならない土地、家屋について、使用者を所有者とみなして固定資産税を徴収
- 法制審議会(来年秋の臨時国会への提出が想定される案)
- 相続登記の義務化、遺産分割協議の期間制限、土地所有権の放棄容認、登記簿と戸籍のシステム連携
法制審議会では、相続登記の義務化に向けて、登記手続きを簡素化する代わりに被相続人の死後一定期間内に登記しなければ罰則を設けることも検討しているようです。家族、親戚が集まる年末年始のこの機会に、いずれ必ずしなければならない手続きとして、保有する土地の相続登記は済んでいるのかを確認し、今後その土地をどうしていくべきか、遺言書の作成を行うなど負担をかけずにどのように子供たちに残していくかなどについて一度話し合ってみてはいかがでしょうか?
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