FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第57回】

【第57回】生前贈与が大きく変わる!?

2021年8月31日

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第57回目のコラムは、近年、相続対策の一環として浸透してきた生前贈与の対策効果が無くなってしまうかもしれないというお話です。

贈与税改正が検討されている

子々孫々挿絵

ここ最近、“暦年贈与が廃止される”、“生前贈与がダメになる”、といった生前贈与に対するネガティブな記事をよく見掛けます。その背景には、2020年12月に閣議決定された令和3年度税制改正大綱の中で、「諸外国の税制制度を参考に、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点で、格差の固定化の防止等に留意しつつ、現行の贈与制度のあり方を見直すことなど、本格的な検討を進める。」との記載(一部要約)があったことが要因と思われます。つまり、生前贈与による税効果を縮小し、相続税に寄せた形での課税を検討するということのようです。

諸外国の税制制度を参考に「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税」とは

現行制度では、相続発生前3年以内に生前贈与を行った財産は、相続財産に持ち戻して相続税が課税されます。米・英・仏などの欧米諸国では、贈与財産の持ち戻し対象期間が、期限なし・7年〜15年以内に設定されるなど、贈与税と相続税をより一体的に捉えて課税されているようです。今回の税制改正大綱ではこのような諸外国の税制制度等も参考にして改正に向けた議論を開始するということのようです。

生前贈与による「格差の固定化の防止」とは

近年、贈与税の税率軽減、教育資金の一括贈与特例の新設など、生前贈与を行いやすい環境が整えられてきました。一連の改正によって富裕層の方にとっては資産に掛かる税負担が軽減され、次世代層への富の移転が早期に計れるメリットがあります。一方で富の再配分といった観点では、格差は縮小されず、格差が固定化されたままなので、固定化を防止する、つまり、格差を縮小するための議論が必要だということです。

備えあれば憂いなし

現状では、改正に向けて本格的な議論を開始するというだけで、改正内容や改正時期など具体的なものは何も決まっていません。ただ、将来的に改正される可能性があるのは事実なので、改正に向けた備えは必要です。例えば生前贈与を前倒しで計画的に実施していくなど、毎年の贈与額をいくらに設定するかということは重要なポイントになりますので、この機会にご検討ください。また、ご興味のある方は、2021年末に公表される税制改正大綱や、政府税制調査会の動向にも着目してみてください。

生前贈与はどれくらい効果があるの?

生前贈与は早めに計画的に実施していくと税効果が大きくなります。例えば、推定相続人は子供3人のみ、相続財産3億円の場合、生前贈与など何も対策を行わないと、概算相続税額は5,460万円になりますが、子供3人に毎年540万円ずつ10年間贈与を行うと、相続税(1,200万円)と贈与税(1,680万円)を合わせても2,880万円(約47%の税額軽減)になります。将来的に改正が行われ生前贈与の効果が縮小されると影響は大きくなりますので、この機会に生前贈与を始めることをご検討ください。弊社では、生前贈与の参考になるシミュレーションをご提供することができますので、是非ご活用ください。

  • 現行制度に基づいた概算税額です。今後改正等が行われた場合は税額が大幅に変わる可能性がありますのでご注意ください。また、実際に生前贈与をご検討される場合には、専門家にご相談下さい。

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