空売り銘柄の選び方とその注意点

信用取引の空売りは、上昇相場においてしばしば発生する短期的な過熱感が出る局面や、買い一辺倒の投資スタイルでは対応することが難しい下落相場でも、利益を出すことが可能です。空売りに向いた地合(株式市場の状態、ムード)の見極め方、空売りする銘柄の選び方とその注意点について解説します。

空売りする銘柄の選び方

空売りとは、証券会社から借りた株式を株価が値下がりすると予想される時に売り建て、実際に株価が値下がりしたところで買い戻すことで利益を得る取引です。空売りは、株価が上昇すると損失が発生し、拡大してしまう取引ですから、いつ空売りするのか、適した地合(株式市場の状態、ムード)を見極めることが必要になります。

空売りする銘柄の選び方の説明図

空売りに適した地合を見極める

空売りに適した地合なのかを判断する指標の1つが騰落レシオです。
市場の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率から、マーケット全体の過熱感を見る指標の1つとして騰落レシオが利用されています。

騰落レシオには、短期売買の指標となる5日騰落レシオと、中期売買の指標となる25日騰落レシオがあります。5日騰落レシオは5日間、25日騰落レシオは25日間の値上がり銘柄数の合計をそれぞれ値下がり銘柄数の合計で割った比率です。
騰落レシオの上昇は、値上がり銘柄が増えていることを示し、120%以上になってきたら、目先的に反落する可能性が高くなります。また、多くの銘柄が値下がりしている地合でも、株価が反発する局面があります。例えば、5日騰落レシオが120%を超えてきたら、短期的な戻り場面が終わり、再び下落に転じる可能性が高くなります。

空売りする銘柄を選ぶ3つの条件

空売り銘柄を探す条件は3つあります。以下に紹介する3つの条件に照らし合わせて、空売り銘柄を選びましょう。

①チャート的に上昇トレンドが崩れている。

買いのセオリーは、「安いところで拾って、高くなったら売る」ですが、空売りでは「戻ったところを売って、一段と下がったところで買い戻す」のがセオリーとなります。上昇トレンドが一旦崩れてしまうと、株価が上昇に転じる場面があっても、上昇幅は限定的となります。

②信用買い残の整理が進まず、決済期日を迎えるまで売り圧力として働いている。

信用買い残の水準は、銘柄ごとに異なります。信用買い残から信用売り残を差し引いた残高が、日々の出来高の2倍を超えてきたら、少なからず需給に悪影響を与えることになります。

③移動平均乖離率が市場平均を上回り、割高な水準まで買い上げられている。

移動平均乖離率とは、株価が移動平均線からどれくらい乖離しているのかを見る指標で、上下どちらも5%を目安に「上がり過ぎたら下がる、下がり過ぎたら上がる」という捉え方をします。移動平均線に対して株価が5%を超えて上放れて乖離していることが条件となります。

空売りする銘柄の選び方

株価のトレンドは、高値と高値を結んだ上値抵抗ライン、下値と下値を結んだ下値支持ラインで判断しますが、2つのトレンドラインがともに下向きで、なおかつ株価が移動平均線を下回っていれば、株価が一時的に反発した時の空売りの銘柄候補となります。また、株価が上昇トレンドにあっても、移動平均乖離率が市場平均を5%上回っている場合は、上がり過ぎたために下がるという視点から空売り銘柄候補となります。

まずチャートのトレンドラインから空売りに向いている銘柄候補を選びます。次に信用買い残増加ランキングを確認し、信用買い残から信用売り残を差し引いたものが、日々の出来高の2倍以上の水準にある「将来の売り圧力が高い」銘柄をピックアップします。そして、選んだ銘柄の中から、移動平均乖離率が市場平均を上回っている銘柄を抜き出します。こうすることで「移動平均線に対し株価が5%を超え上放れて乖離している銘柄」へと、絞り込んでいくことができます。

制度信用取引において、空売りできる銘柄は貸借銘柄に限られるため、信用取引を行う画面では「信用貸借区分」が「貸借」である必要があります。また空売り取引には、51単元以上の注文は、成行注文を含め直近公表価格以下で発注することは禁止などの価格規制があります。空売り注文の発注に際しては、事前に空売り価格規制の内容について確認しておきましょう。

空売り注目銘柄を調べるには

株式市場の売買高は、増えてくると株価が上昇し、減っていくと株価が下落しやすい傾向があります。
当社のトレーディングツール『パワートレーダー』や日興イージートレードの『詳細チャート』を活用し、日々の売買高を確認することで、マーケットの地合(相場の状態)のほか、どんな業種や企業がマーケットで注目されているのかを知ることができます。
売買高が膨らんで、マーケットに活気が出てくると、増加するのが信用取引です。6ヶ月以内に決済を行わなければならない信用買いと信用売りを総計した信用残高の需給分析においても、『パワートレーダー』のランキング機能は威力を発揮します。
物色意欲のバロメーターともいわれる信用買いですが、下落トレンドにありながら、信用買い残が増加している空売りに適した銘柄を探すだけでなく、マーケットの先行き判断に役立てることが可能です。また対比チャート機能を活用して、空売り候補銘柄と日経平均のチャートを比較し、売買のタイミングを計ることにも役立ちます。

空売り取引のタイミング

空売りは、株価が下がれば利益が出る取引ですが、株価が上がれば損失が出る取引でもあるため注意が必要です。
株式市場には、全体が下落する全面安の局面があり、「上昇トレンドの最中の調整的な意味合いの強い全面安」と「下落トレンドの途中で底値を付けに行く全面安」があります。タイミング良く全面安の局面を捉えることができれば、空売りで利益を出すことは可能ですが、そのリスクには大きな違いがあります。

空売りで避けなければならないのは、上昇トレンドでの「もう下がるだろう」という思い込みで仕掛ける空売りです。成功すればリターンは大きくなりますが、上昇トレンドにある場合、株価の振幅が大きくなるため、失敗した時のリスクも大きくなります。これに対して、下落トレンドに転換すると、下げては戻り戻っては下げてを繰り返しながら、株価の振幅は収まっていきます。下げては戻りのタイミングで、空売りを仕掛ければ、リスクを抑えることができるのです。

まとめ

空売りは、株価が値下がりすることで利益が得られる取引手法です。
マーケット全体の過熱感を見る指標、騰落レシオを活用して、株価が下がる可能性が高い局面で、「①チャート的に上昇トレンドが崩れている」「②信用買い残の整理が進まず、決済期日まで売り要因がある」「③移動平均乖離率が市場平均を上回り、割高な水準まで買い上げられている」銘柄がターゲットになります。また事前に空売り価格規制の内容について確認しておくことも必要です。

合わせて読みたい記事はこちら

信用取引をはじめるなら
今すぐ口座開設

口座をお持ちのお客さま

重要事項(投資する場合のリスク・留意すべき事項)

契約締結前交付書面にはお客さまが投資判断されるために必要な「契約概要」「手数料等」「主なリスク」等が記載されています。お取引の前に契約締結前交付書面をお読みください。