FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第60回】
【第60回】18歳成人、4月以降の贈与で税を軽減できる場合も・・・
2022年2月28日
FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第60回目のコラムは、成人年齢の変更と贈与に関するお話です。
18歳で成人
4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。しかし一般的に成人になってできることとして思い浮かぶお酒、たばこ、競輪・競馬等の公営ギャンブルは今回の成人年齢引き下げの対象から外されています。では18歳成人で何ができるようになるのでしょうか?民法が定める成年年齢(成人)には、①一人で有効な契約をすることができる年齢という意味と、②父母の親権に服さなくなる年齢という意味があります。
つまり成人年齢が引き下げられることにより18歳になったら高校3年生等であっても、銀行口座や証券口座の開設(金融機関で異なる可能性はあります )、携帯電話の契約、クレジットカードの作成、アパートの賃貸契約等の各種契約行為について親権者の同意がなくとも一人で結べるようになります。未成年者であれば親権者の同意なく結んだ契約は原則取り消すことができますが成人となるとそのような保護もなくなるため当然トラブルに巻き込まれる可能性が高まります。社会経験に乏しく、保護のない成人を狙い打ちにする悪質な業者もいることから自分が行う契約についてよく考えるという習慣を成人になるお子さんやお孫さんに身につけさせることが必要だと思います。
贈与も契約
さて、契約という観点で見ると贈与もあげる側の「無償で財産をあげる」という意思に対し、もらう側の「もらう」という意思表示によって成立する1つの契約です。生前贈与は早めに計画的に実施していくと税効果が大きくなるため早くからお孫さん等に贈与されている方もいらっしゃると思います。このような未成年者への贈与は親権者による契約または親権者の同意が必要となるため、実際にはもらう未成年者よりも親権者が中心となって贈与契約書を作成していることも多いかと思います。しかし、4月以降に行う贈与についてもらう側が18歳、19歳の場合、今までとは異なりもらう側が成人となりますので、成人となったお孫さん等と直接「あげる」「もらう」の契約を行う必要がでてきます。
成人年齢引き下げで税を軽減できる場合も
ところで、成人年齢が18歳になることで、税負担が軽くなる場合があります。
まず、一般的な贈与(暦年贈与)は、もらう人の年齢等によって税率が2種類に区分されています。①父母や祖父母からその年の1月1日において20歳以上の子・孫等に贈与した場合に適用される「特例税率」と②特例税率の適用が無い「一般税率」で、一定額以上の贈与については基本的に「特例税率」の方が「一般税率」より税率が低くなっています。この「特例税率」の適用条件である20歳以上の子・孫等が4月からは18歳以上になります。
例えば、贈与する金額を500万円とします。その場合、贈与の基礎控除額110万円を差し引いた390万円に特例税率または一般税率を適用して税額を計算します。税額は特例税率適用の場合48.5万円、一般税率適用の場合53万円となり、特例税率を適用した方が4.5万円も税額が少なくてすみます。そのため、もらう側である子・孫等が18歳、19歳の場合は特例税率が適用できるようになる4月以降に贈与したほうが税負担は軽くなります。しかし、贈与する金額が200万円の場合、特例税率も一般税率も税率が同じであるため4月以降に贈与しても税負担は同じになります。18歳、19歳の子・孫等に贈与を考えている場合、 4月以降に贈与した方が良いのか、4月以降に贈与しても同じなのか一度ご確認をお願いします。
次に60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の子・孫へ2500万円まで贈与税は課税されずに贈与を行うことができ、贈与した父母や祖父母が亡くなったときに贈与した資産を相続財産に加算して相続税として精算する「相続時精算課税」についてです。こちらの適用条件である20歳以上の子・孫も4月から18歳以上になります。
「相続時精算課税」は、相続財産に加算する際の評価が、相続時の評価額ではなく、贈与時の評価額となるため、今後値上がりが期待できそうな資産(土地・株等)を早めにまとめて贈与したい場合に有効な贈与方法です。今回の成人年齢の引き下げにより、4月以降であれば18歳、19歳の子・孫に2500万円まで贈与税を支払うことなく渡すことが可能になります。(なお、注意する点として贈与時の価額が加算されるため、贈与後に贈与財産が値下がりした場合は、期待された効果が得られない可能性があります。)
他にも結婚・子育て資金の一括贈与が最大1000万円(結婚に際して支払うものは最大300万円)まで非課税になる制度や事業用資産や非上場株式について贈与税や相続税の納付を猶予・免除する事業承継税制の年齢も18歳以上に引き下げられることになっています。
ただ渡すだけでなく考える機会に
未成年者の場合、これまでは祖父母からもらった資産を父母が管理するケースもあったかと思います。しかし前述の通り4月以降、18歳以上であれば高校生等であっても一人で各種契約を行うことができ、金融機関への口座開設もできるようになります。金融商品・サービスには様々なものがありますので、正しい選択ができるよう贈与をする機会にただ渡すのではなく、契約とはどのようなことなのか、もらった資産を自力で運用するにはどのような点に気を付けなければいけないのかなど、あげる側、もらう側で一緒に話し合い、考える機会にしてみてはいかがでしょうか?
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