FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第63回】

【第63回】遺産分割、10年経過で遺産配分に影響!?

2022年8月31日

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第63回目のコラムは、遺産分割長期化による影響に関するお話です。

遺産分けでもめていると思いもよらない結果になる可能性が

親等が亡くなり相続人同士が相続財産の分割方法について話し合う際、亡くなられた方の生前における財産の維持または増加に特別な貢献をしていれば、自分の貢献度に応じて遺産をプラスしてほしいと「寄与分」を主張するのは当然のことでしょう。また、逆に亡くなられた方から生前贈与等により特別な利益を受けている相続人がいれば、その「特別受益」を考慮して遺産を分けてほしいと主張するのも至極当然であり、またよくあることだと思います。しかし2021年の民法改正により、相続開始から10年経過後の遺産分割について原則として「寄与分」や「特別受益」等を主張することができなくなり、法定相続分に従って財産を分けることになりますので注意が必要です。

改正の背景

現行の民法の下では、遺産分割の合意や遺産分割の申立をすることについて、期間の制限が設けられていないため、相続が発生してもすぐに遺産分割を行わず、その結果、親、子、孫と何代にも放置され所有者が不明となった土地が増加しました。所有者が不明な土地の面積は、今や国土の約22%、九州の面積を上回る規模になってしまったといわれており、土地の有効活用の妨げや治安の悪化等が大きな問題となっています。その解消策の一つとして、速やかな遺産分割を促すため上記のような改正が行われることになりました。

改正法はいつ施行されるのか

改正法は、2023年4月1日からの施行となりますが、改正法施行前に発生した相続についても適用になります。(施行日にすでに死亡後10年が経過している場合は2028年3月末まで、施行日に死亡後10年が経過していない場合には、死亡後10年経過時または2028年3月末のいずれか遅い日までが猶予期間となり、寄与分や特別受益を主張することができます。)
長期間遺産分割をしないまま放置しているケースでは、早めに相続人同士で話し合いを行うか、争いが予想される場合には、調停・審判の申立をご検討いただくことも必要かもしれません。ただし、遺産分割協議自体に法律上の期限が設けられたわけではないため、相続発生から10年を過ぎても、相続人間の話し合いで寄与分や特別受益を考慮して遺産分割を行うことは可能です。

将来の争族を防ぐ対策がこれまで以上に重要

特定の相続人が寄与分や特別受益を主張することが予想されるケースというのは、財産を遺すご自身が一番よく分かっているはずです。ご自身が、特定の相続人から特別の貢献を受けていたり、特定の相続人に特別の受益を与えていたりするからです。
相続人同士に任せると「長男はマンションの購入資金を出してもらっていたが、自分は出してもらっていない」「自分は被相続人の介護を他の兄弟よりおこなっていた」等、それぞれの相続人の主張により遺産分割が複雑化しかねません。
「遺産分割に期限はないから、後のことは相続人同士で話し合えばよい」という考えをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、改正法施行後は、遺産分割の長期化により寄与分や特別受益の主張に影響がでてしまうため、そのような考え方を見直すことが必要になると言えそうです。相続人を想い、将来の争いを防ぐ対策を講じておくことが、今後はこれまで以上に重要になってくると思います。

重要性が増す遺言書

子々孫々挿絵

寄与分や特別受益による争いや、その他の様々な事情を考慮したうえで生前に遺産の配分を決め、遺言書を遺すことで将来の相続人間の争い(争族)を防ぐことが可能になります。
遺言書というと「財産をたくさん持っている人が書くもの」というイメージをお持ちの方もいらっしゃいますが、そうではありません。最新の司法統計によると調停が成立した遺産分割事件数の約76.6%が遺産総額5,000万円以下です。

また、遺言書があればそれぞれの相続人に自分の想いに応じた財産額を指定することができますし、どのような理由でそのように指定したかも示すことができます。受け取る額は同じであったとしても、故人の想いを知ることで納得できることもあるでしょう。
繰り返しになりますが、これまでは遺産分割協議を先延ばしにしても不利益となるリスクは少なかったかもしれません。しかし今後は今までのようにはいかなくなり争族のリスクも増加する可能性があります。そのようなことにならないよう、これまで以上に遺言書を作成することが重要になると思います。

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