FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第64回】
【第64回】急増する空き家問題の現状とその対策
2022年10月27日
FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第64回目のコラムは、「急増する空き家問題の現状とその対策」に関するお話です。
空き家の現状と問題点、リスク
近年、住居としての建物はあるものの誰も住んでいないいわゆる「空き家」が大きな問題になっています。高齢化や人口減少に伴い、被相続人の自宅を相続人が引き継がず放置されたままになっていることが主な理由です。
総務省「住宅・土地統計調査」によれば、全国の空き家数は、過去30年(1988年〜2018年)で約394万戸から約849万戸となり、2倍以上増加しました。空き家率(空き家戸数が総住宅戸数に占める割合)も上昇を続けており、2018年の空き家率は13.6%に達しています。
相続などにより、空き家を所有することになった方には高齢の方も多く、空き家の管理が負担になっているケースが多いことがうかがえます。こうした所有者の現状からも、空き家の増加は対策を講ずべき喫緊の問題といえます。
生前にできる空き家問題の対策
ここでは生前にできる空き家問題の対策について述べます。
相続が発生する前の段階から、所有者やいずれ相続人になる家族が積極的に関与し、引き継ぐための準備が必要です。また所有者の体力や判断能力が低下する前に着手することが重要です。親が元気なうちに家財道具を生前整理しておくと、後々の家族の負担を減らすことができます。また子どもたちや家族が将来居住する可能性があるなら、適切な管理も大切です。
大切なことは、親が整理・対策をしようとする気持ちを持てるような寄り添った言葉がけです。ささいなことから喧嘩にならないよう、中心は親であることを忘れず始めていきましょう。
具体的対策としては遺言も有効な手段です。遺言は財産の承継・処分方法・未成年後見人の指定などにおいて法的な効力を持ちます。遺言には一般的に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」とがあります。自筆証書遺言は自分で手軽に作成できるのがメリットですが、形式によっては無効になる恐れがあることと、死後に発見されないリスクもあります。その対策として、法務局で遺言書の原本を保管してくれる「自筆証書遺言書保管制度」があります。一方、公正証書遺言は手数料こそかかるものの、公証人と相談しながら効力のあるものを作成してもらえますので、確実性を重視したい場合おすすめします。
判断能力の低下への対処法として、成年後見制度があります。成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」があり、どちらも本人の後見人が、財産管理や各種の契約などを行います。大きな違いは、本人が後見人を選ぶことができるかどうかで、「任意後見制度」は本人が判断能力のあるうちに、信頼できる人を代理人(任意後見人)に選び、「任意後見契約」を結ぶことができます。その後本人が判断能力を失ったら、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任申し立てを行い、任意後見監督人の下で後見を開始します。一方「法定後見制度」は、本人が自分で代理人を選ぶことはできません。既に判断能力を失っており、ご家族や親族が家庭裁判所に申し立てることで、成年後見人を選任してもらいます。親族が選任されることもありますが、多くの場合、弁護士など親族以外の専門家が選ばれています。
相続発生後の空き家の管理、活用
相続などで空き家を取得し、活用するにあたって最初の分かれ道は子どもたちまたは親族で使う、もしくは他人に委ねる(賃貸する・売却する)の二つの方法となります。最初のステップは相続登記を正しく行い、所有権を明確にすることと、家族で相談し、活用法を検討することです。なお相続登記においては不動産登記法の改正(2024年4月1日施行)により、任意ではなく、相続財産の取得を知った日から3年以内に登記することが義務になり、法改正(2024年4月1日)以前の相続についても適用されます。
他人に委ねる活用を選択した場合、良いサポート役を見つけることが重要です。その有力な候補の一つが不動産会社です。不動産の賃貸・売却は簡単ではありませんが、不動産会社のサポートを受けつつ、全体の流れを把握し、慎重に進めることができます。
また空き家の有効活用促進を目指す代表的な取り組みとして「空き家バンク」が挙げられます。「空き家バンク」とは、空き家の物件情報を地方自治体のホームページ上で提供する仕組みであり、既に約7割の地方自治体(2019年10月時点)が設置しています。さらに、国土交通省は開示情報の標準化を図り、「全国版空き家・空き地バンク」を創設し、2018年4月から本格運用を開始しました。
スマートフォンなら最短即日
パソコンなら最短3日で取引可能!
各種パンフレットを
WEB上でご覧いただけます。
免責事項
当ページのいかなる内容も将来の運用成果、市場環境の変動等を示唆、保証するものではありません。
当ページの掲載資料および内容は作成時点の法令、その他情報に基づき作成されていますが、今後の改正等により、取り扱いが異なる場合等があり、将来予告なく変更されることがあります。当ページは信頼できると判断した情報等に基づき作成しておりますが、情報の正確性、完全性についてSMBC日興証券が保証するものではありません。
当ページの内容にかかわらず、お取引に伴う税制の適用はお客さまの個別の状況に応じて取り扱いが異なる場合があります。個別具体的なケースにかかる税務上の取り扱い等につきましては、税理士・税務署等にご相談ください。
当ページの内容はSMBC日興証券が有価証券の売買その他取引等を誘引する又は投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資判断の最終決定は、ご自身の判断と責任で行ってください。
当ページに掲載の動画、静止画、記事等の情報は、収録時点のものであり、その後、変更されている場合があります。最新の情報は、ご自身でご確認ください。
コンテンツの内容に対する改変、修正、追加等の一切の行為を禁止いたします。