FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第70回】
【第70回】2024年贈与税改正等がスタートします!〜相続対策の再検討を〜
2023年12月29日
FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第70回目のコラムは、 2024年からスタート(施行)する贈与税等の改正内容とその準備に関するお話です。
2023年、今年の漢字は「税」
12月12日京都の清水寺で今年の世相を表す漢字として「税」という文字が選ばれました。選出理由についてインボイス制度の導入やふるさと納税のルール厳格化など「税」にまつわるさまざまな改正や検討が行われたことがあげられていましたが、このさまざまな改正の中に2024年から施行する相続に関する改正もありました。
贈与の現状
2024年の改正で注目すべきは贈与に関するものです。現在、贈与の手法には、①年間110万円を超えた分について税金を納める「暦年課税」と②要件を満たした親・祖父母から子・孫への贈与において贈与時には2,500万円まで非課税とし相続時に贈与した財産を相続財産に加算して相続税で精算する「相続時精算課税(以下、精算課税)」の2種類があります。しかし、相続税の負担軽減を目的に広く利用されている「暦年課税」に比べ「精算課税」の利用実績は現状1割にも届きませんが、2024年からの改正を受け利用拡大が見込まれています。
「暦年課税」は課税強化、「精算課税」は使い勝手向上
最初に「暦年課税」の改正についてです。贈与者が”亡くなる直前”に贈与した財産を相続財産に加算する期間が2024年1月1日以降の贈与について「3年」から順次「7年」に延長されます。つまり贈与はなかったものとされる期間が延長されるので相続税の軽減効果が思い通りに得られない可能性が高まります。次に「精算課税」の改正についてです。こちらは2024年1月1日以降の贈与について年間110万円の基礎控除額を暦年課税の基礎控除枠とは別途設け、この基礎控除額以下での贈与分は相続財産に加算しないとされました。このことにより贈与を毎年110万円の基礎控除額以下で行っている方は年数に関係なく加算されない精算課税を利用した方が税負担を軽減できることになります。
「暦年課税」「精算課税」どちらを選択するべきか
贈与する金額が年間110万円の基礎控除額以下の場合、「精算課税」であれば年数に関係なく相続財産に加算されないので本制度適用対象者であれば「精算課税」を選択した方が良いと思います。
贈与する金額が基礎控除額である110万円を超える場合、贈与する金額や期間により選択が分かれるのですが、ひとつ言えることは贈与する方の健康状態を考慮に入れた方が良いということです。「暦年課税」で相続財産に加算される期間は7年なので、贈与を健康で若いうちから始める場合は「暦年課税」を選択し、ある程度の年齢になって健康に不安を感じるようになってきたら贈与した財産が全額加算される「暦年課税」から年数に関係なく毎年110万円の基礎控除額分は相続財産に加算されない「精算課税」に切り替えることが選択肢の1つになると思います。あくまで参考ですが、平均寿命男性 81.05年、女性87.09年※から考えると、多少余裕もって男性70歳、女性75歳ぐらいが切り替えの検討タイミングかもしれません。なお、一度「精算課税」を選択すると「暦年課税」に戻すことはできませんので、こちらも考慮して検討するようにしましょう。
贈与は「誰に」「何を」「いくら」の3つを考えることが重要
ここまで2024年からの贈与の改正について触れてきましたが、実は贈与を行う際に重要なのは、「暦年課税」「精算課税」といった贈与手法より「誰に」「何を」「いくら」の3つを考えることです。たとえば、「誰に」であれば、「暦年課税」は確かに加算期間が7年に延長され課税強化となりましたが、贈与する相手が相続財産をもらう人ではないお孫さんやお嫁さん等の場合は原則加算対象とはなりません。そのため贈与者や受贈者に制約がない「暦年課税」を利用してお孫さん等法定相続人以外の方へ行う贈与は今後も有効な相続対策だと言えます。また贈与については、「住宅資金贈与」「教育資金の一括贈与」等特例贈与もいろいろありますので、贈与する相手である「誰に」対して一番適した贈与手法は何なのかを検討するようにしましょう。
次に「何を」ですが、有価証券や収益不動産など将来の上昇が見込める財産を早めに贈与しておくことです。値上がり分は相続財産に含まれない上に仮に加算対象となった場合でも贈与時の評価額で計算するためこちらも有効な相続対策となります(値下がりした場合も贈与時の評価額となるため注意が必要)。逆にまとまった金額を一括贈与できるからと精算課税を利用して同居している子供に自宅を贈与してしまうと相続時に自宅の相続税評価額を8割減にできる小規模宅地等の特例が使えないということになりますので贈与したことが相続対策としては逆効果となってしまうかもしれません。そのため「何を」贈与するかは慎重に検討するようにしましょう。
最後に「いくら」ですが、一番大切なことは相続対策より自分自身がより良い生活を送ることです。贈与をしすぎて生活資金に影響が出たのでは元も子もありません。また生活資金だけでなく自宅のリフォームや通院・介護等のライフイベントも勘案した計画を立てた上で贈与金額を決定するようにしましょう。なお、弊社では相続税率と贈与税率との差を考慮した贈与シミュレーションをご提供することができますので、参考として是非ご活用ください。
まずは現状把握を
2024年に施行される改正内容には、贈与のほかにもマンションにおける相続税評価額の変更や相続登記の義務化等もあります。いずれの対策においてもまず、自分自身の財産の棚卸しを行い、相続不動産の名義人は誰なのか、評価額はどうなっているのか等現状把握をしましょう。現状把握を行うことが改正に対応するための一番最初の準備となります。その上で、「誰に」「何を」「いくら」の3つを考えながら2024年からの改正も考慮して相続対策の再検討を行うことをおすすめします。
- ※(出所) 厚生労働省「令和4年簡易生命表」
スマートフォンなら最短即日
パソコンなら最短3日で取引可能!
各種パンフレットを
WEB上でご覧いただけます。
免責事項
当ページのいかなる内容も将来の運用成果、市場環境の変動等を示唆、保証するものではありません。
当ページの掲載資料および内容は作成時点の法令、その他情報に基づき作成されていますが、今後の改正等により、取り扱いが異なる場合等があり、将来予告なく変更されることがあります。当ページは信頼できると判断した情報等に基づき作成しておりますが、情報の正確性、完全性についてSMBC日興証券が保証するものではありません。
当ページの内容にかかわらず、お取引に伴う税制の適用はお客さまの個別の状況に応じて取り扱いが異なる場合があります。個別具体的なケースにかかる税務上の取り扱い等につきましては、税理士・税務署等にご相談ください。
当ページの内容はSMBC日興証券が有価証券の売買その他取引等を誘引する又は投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資判断の最終決定は、ご自身の判断と責任で行ってください。
当ページに掲載の動画、静止画、記事等の情報は、収録時点のものであり、その後、変更されている場合があります。最新の情報は、ご自身でご確認ください。
コンテンツの内容に対する改変、修正、追加等の一切の行為を禁止いたします。