FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第72回】

【第72回】戸籍証明書等の広域交付制度が始まりました

2024年4月25日

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第72回目のコラムは、相続手続きと戸籍証明書等の広域交付制度に関するお話です。

戸籍証明書等の広域交付制度がスタート

子々孫々挿絵

戸籍証明書等の広域交付制度が始まったことはご存知でしょうか。2024年3月1日から改正戸籍法が施行され、戸籍証明書等をひとつの市区町村役場の窓口でまとめて取得できるようになりました。今回は、戸籍証明書等の広域交付制度が導入された背景と制度の概要についてお話ししたいと思います。

戸籍とは

戸籍制度は世界でも日本と台湾だけの特有な制度で夫婦関係、親子関係や日本国籍保有などを証明する公的文書です。戸籍謄本(電子管理された夫婦や親子全員の氏名が記載された「全部事項証明書」)や戸籍抄本(電子管理された本人氏名だけを抜粋し記載された「個人事項証明書」)が必要になる身近なシーンとしては、婚姻届の提出、パスポートの申請、国民年金や厚生年金等の受給申請などがあげられますが、中でも戸籍が必要となり請求手続きを行う際に最も手間と時間がかかるのは何と言っても相続手続きではないでしょうか。

相続手続きにおける戸籍の必要性

相続手続きで戸籍が必要となる理由は次の二つの理由からです。

  • 被相続人(亡くなった人)が死亡していることを確認するため
  • 相続人が誰なのかを明らかにするため

戸籍には夫婦、親子、兄弟姉妹の関係から養子縁組、除籍者などが記載されており、戸籍を読み解くことで相続手続きを進めていくために必要な情報である被相続人と相続人との関係がわかるようになっています。戸籍以上によく利用される公的文書に住民票がありますが、これは、現在の居住実態を証明する文書であるため、同居していない親や子どもは記載されておらず、親子関係を証明できる文書にはなりません。

相続発生後は、相続税申告、不動産の相続登記、預貯金の払い戻し、株式など有価証券の名義変更、保険金の請求、携帯電話の解約、相続放棄など本当にたくさんの手続きで戸籍の提出が必要となります。その中でも金融資産の相続手続きでは相続人を確定し、誰がどの資産を引き継ぐかを確認して初めて相続人への名義変更と売却や解約などが可能となります。

こうしたことから金融機関では相続人が誰なのかを確定するために、故人の出生から死亡までの戸籍謄本と相続人全員の現在戸籍の提出を求めることになります。コピーではなく役所が発行した謄本の提出が必要となることがほとんどのため、相続手続きで必要な戸籍を各金融機関に提出するまでに何通もの戸籍を取り寄せるなど大変な労力と費用がかかるのがよくある相続手続きの実態なのです。

相続財産の名義変更は手間と時間がかかる

相続手続きで必要な戸籍は本籍地が変わった場合は旧本籍地の市区町村役場からも取り寄せる必要があり本籍地の数だけ請求する必要があります。苦労して取り寄せた戸籍の提出先も税務署、法務局、金融機関など数か所になることが一般的なため、費用がかかる上に煩雑な手続きに忙殺されるケースも珍しいことではありません。戸籍原本をそれぞれに提出する非効率性に関しては「法定相続情報一覧図」という家系図のような証明書を法務局が無料で発行してくれる制度があります。戸籍の提出先がたくさんある方には戸籍を何通も用意する必要がなくなるなど効率化、時間の削減が図れるとても便利な制度のため相続手続きを行う際には確認してみてください。

また、本籍地が遠方で訪問できないときは郵送手続きになることが多いと思います。煩雑な作業になるため、税理士や司法書士など専門家に依頼するのも選択肢の一つとなるほか、戸籍の収集だけではなく相続手続きの全てを代行してくれる金融機関などが提供している遺産整理サービスの利用もおすすめです。

戸籍証明書等の広域交付制度の概要

これまで相続手続きにおける戸籍の必要性と戸籍収集の大変さについて述べてきましたが、この度、煩雑な戸籍収集の負担軽減につながる戸籍証明書等の広域交付制度が始まりました。広域交付制度に基づいて交付請求できるのは、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本などです。

これまで戸籍情報は各市区町村ごとの個別システムで管理されていましたが、現在は法務省の新システムで一括管理された戸籍副本データを市区町村にデータ連携することで、本籍地ではない市区町村役場の「どこでも」ひとつの窓口で戸籍証明書等を「まとめて」取得できるようになりました。法務省のホームページでは「どこでも」「まとめて」の2つがキーワードとなっているように本籍地が遠くにある方でも自宅や勤務地など最寄りの市区町村役場で受け取ることができるわけですから時間や手間の軽減を期待することができます。

戸籍証明書等の広域交付制度の注意点

広域交付制度で便利になった反面、注意点も確認しておく必要があります。まず、紙で保管されたままでコンピュータ化されていない一部の戸籍証明書や戸籍の附表等は対象外となります。次に戸籍証明書等を請求できる続柄は本人、配偶者、父母や祖父母など直系尊属と子や孫などの直系卑属の範囲に限定されており、兄弟姉妹や甥姪などの分は請求できません。請求には本人確認のため請求者本人が直接、市区町村役場の戸籍担当窓口に行って、運転免許証やマイナンバーカードなど顔写真付き身分証明書を提示する必要がありますので、忘れることが無いよう気をつけてください。本人確認の必要性から郵送による請求や親族や司法書士等の代理人による請求はできません。士業の職務上請求の対象にはならないという点も注意点です。

相続手続きで戸籍を遡ってたくさんの戸籍を請求する場合など、役所では当面の間は本籍地への確認作業が発生するため後日の交付となることもあるようです。欲しい日に窓口に行ってもすぐに受け取れない場合も想定されますので市区町村のホームページなどで事前に状況を確認し、お時間には余裕を持った申請が重要です。

今後は

戸籍情報のデータ管理が一歩進んだことで、今後は各種社会保障手続きなどでマイナンバー制度の活用により戸籍証明書等の添付が省略できるようになることが公表されています。開始時期等については手続きにより異なるとのことですが、より一層の効率化が実現することに期待したいものです。

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