FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第74回】

【第74回】お墓じまいが増えている!〜今どきのお墓事情とその背景〜

2024年10月11日

FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第74回目のコラムは、「お墓じまいが増えている!〜今どきのお墓事情とその背景〜」に関するお話です。

変化するお墓事情

子々孫々挿絵

お盆と言えば故郷に帰ってお墓参りをする――。そんな日本古来の風習が過去のものになるかもしれません。厚生労働省の調査によると「改葬」は2010年度に全国で7万2,180件だったものが、2022年度には15万1,076件とわずか10年あまりの期間で2倍以上に数が増え、過去最多になっています。

ちなみに「お墓じまい」と「改葬」は混同されやすいのですが、 「お墓じまい」はお墓を撤去して更地にしてお墓の使用権を管理者に返還することを意味するのに対し、 「改葬」は今あるお墓と遺骨を別の場所に移動すること、つまりお墓のお引越しを意味します。そのため、「改葬」を行う際は元のお墓を「お墓じまい」する必要があることから「お墓じまい」は「改葬」に含まれるという考え方をすることが多いようです。また、 「改葬」におけるお墓の引越し先は一般的なお墓だけでなく、樹木葬や納骨堂への遺骨の移動も「改葬」だと考えられているようです。

お墓じまいが増えている背景

では、なぜ「お墓じまい」が増えているのでしょうか?近年、地方の過疎化や少子化などの影響もあり、継承する方や縁故者がいなくなったり、管理費が一定期間支払われないお墓である無縁墓が増えています。出生率の低下から見てわかるように、我が国では少子化が加速しています。亡両親は自分がいたから無事に先祖代々のお墓に入れることができました。しかし自分はどうでしょうか?そして、自分の子供、自分の孫はどうでしょうか?子供のいない方はもちろんですが、子供がいたとしても遠く離れた先祖代々のお墓を守らせるのは荷が重いと言えます。

このように「子供に負担をかけたくない」「お墓が遠方にありお墓参りが難しい」「夫婦それぞれの実家のお墓を守るのが大変」という思いがあった方に、新型コロナの影響で墓参りがしにくい時期があったことが実感として加わり、さらにお墓などの祭祀財産は遺産分割の対象ではなく相続税も掛かりませんが、維持管理費用負担や掃除などの手間もあり、跡継ぎ不要といったお墓を希望される方にあった樹木葬や散骨など「改葬」の選択肢が増えたことが「お墓じまい」が増えている背景にあると考えられます。

お墓じまいの近年の傾向とお墓じまいのステップ

よくあるケースはお墓を継ぐ祭祀承継者が都市部に住んでおり、地方にある先祖代々のお墓をお墓じまいして、都市部の永代供養墓や納骨堂に移すことかと思います。このような場合、地方に多数の親族がいらっしゃることが多いと思います。この時一番重要なのは、その親族の方々の気持ちも踏まえたうえで、お墓じまいの時期などを検討するということです。

次にお墓じまいを検討するに際してのステップをお伝えします。

  1. 1家族・親族間で相談し、事前に同意を得る
  2. 2改葬に必要な手続きや書類を確認する
  3. 3墓地管理者へ改葬の意志を伝える
  4. 4新しい納骨先を決める
  5. 5改葬許可証を取得する
  6. 6墓石の閉眼供養(魂抜き)、ご遺骨の取り出し
  7. 7墓石の撤去・解体工事、使用権の返還
  8. 8遺骨の受け入れ先に納骨

なお、お墓じまいの方法は基本的にキリスト教、イスラム教、ユダヤ教などでも仏教でも変わりません。

まず家族や親族、墓地管理者といった関係者にお墓じまいの意向を伝え相談します。次に新しいお墓や供養方法を決め、改葬に必要な書類の取得と手続き、お墓の撤去と解体を行います。そして、新しいお墓に遺骨を納め完了します。

ただ、キリスト教などのお墓じまいでは信仰の違いから、仏教のお墓じまいで必要な閉眼供養や開眼供養は行いません。

今のうちに考えておくべきこと

故人を想う気持ちは今も昔も変わりません。まずは家族とお墓参りするタイミングなどをつかってお墓の承継について話してみてください。その上で、「お墓じまい」を検討することになったら、繰り返しになりますが、必ず「お墓じまい」の前に親族の方などに相談するようにしてください。

先祖代々受け継がれてきたお墓ほど、多くの親族のご先祖さまが納骨されているお墓なのです。「お墓参りをしようとしたら、知らないうちにご先祖さまのお墓がなくなっていました!」「勝手に遺骨を移すなんて許せません!」というようなことにならないように、事前にお墓じまいの意向を伝え、相談しておくことが、トラブル防止につながります。

またお墓は一般的に長男が継ぐものとされていますが、例えば遺言書を作成し、その付言事項に『長男が墓守となることで生じる経済的負担を考慮し、財産の配分を多めにした。』等と記載しておけば相続人間の納得感が得やすくなるかもしれません。

自身の死後に子供達だけで遺産配分を決めることになると「お墓を継ぐから遺産を多く相続させてほしい」といった主張は通り難く、どうしても揉めるリスクが残るので、自身の想いが形に遺る遺言書を作成することが、結果的に子供達の兄弟姉妹間のトラブルを回避することにもなります。

まだちょっと先にはなりますが、年末年始の家族・親族があつまるタイミングに向けて、我が家の「お墓」の今後とご自身の想いを遺す「遺言書」の作成についてこの機会に考えてみてはいかがでしょうか。

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