FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」【第44回】
【第44回】実家の片づけ−親が安全・安心に暮らすために−
2019年6月14日
FPの相続コラム「子々孫々へ遺す想い」では、相続に関連したお役立ち情報から最新の話題までをお伝えいたします。第44回目のコラムは、「実家の片づけ」に関するお話です。
なぜ実家の片づけが必要となるの?
従来の家族の代表的な姿、三世代同居であれば、子や孫たちとコミュニケーションをとる機会も多く、実家の「片づけ」についてそれほど深刻に考える必要はなかったと思います。しかしながら、近年では、少子化・核家族化が進み、「一人暮らし」や「老夫婦のみ」の世帯が増えています。特に、親と離れて暮らす50代以上の子世代は、親の介護施設への入居や亡くなったことをきっかけに、実家の「片づけ」を迫られ、頭を抱える人は少なくないと思われます。
モノの少ない時代に育った80代前後の親世代は、モノを捨てることに抵抗もあり、大切にモノをとっておく傾向にあると思われます。以前は整理整頓が上手だった親も、年齢と共に足腰が弱り、「片づけ」が思うようにできなくなっているかもしれません。親と同居していれば一緒に片づけられますが、一人や年老いてからでは難しくなり、モノが多いほど残された子世代の負担は増えてしまいます。
子世代の課題
親の介護や実家の「片づけ」が必要になってくる時期は、ちょうど子世代にとって、これからの人生を考えるときと重なります。子供が巣立っている場合は、夫婦二人では広くなった自宅のリフォームや引っ越しなどを考える頃ではないでしょうか。定年退職が迫っている場合は、定年後の人生や仕事について計画する必要もあり、加えて現在の仕事や家事もあります。
実家の場所、残されたモノの量など、状況はそれぞれ異なります。しかしながら、最終的には、亡くなったときには必ず「片づけ」が必要な遺品となります。 多くは残された子世代が片づけることになります。 「本当に捨ててよいモノか?」「もっと帰省して一緒に片づけてあげたかった」「思い出話をしっかり聞きたかった」など、様々な思いが溢れてくるかもしれません。その辛さは経験しないとわからないでしょう。「片づけ」には気力と体力が求められます。少しでも早いうちに徐々に取り組むことをお勧めします。
家族のコミュニケーションを大切に
親が元気なうちの「片づけ」の目的は、物を捨てることではなく、安全・安心に暮らすことです。
親世代は筋力や体力の低下とともに、家の中でモノにつまづいて骨折や入院につながる場合もあると思われます。また、「片づけ」を通して、重要書類の保管場所を確認したり、新たな骨董品、絵画等が見つかるかもしれません。代々伝わる重要なモノなのか、親の思い出のモノなのか聞くこともできるでしょう。価値のあるモノならば、もしもの時に困らないよう、遺言書やエンディングノートに記録してもらうことをご検討してみてはいかがでしょうか。
(併せてバックナンバー「第30回 『生前整理』のすすめ」もご覧ください)
解決策は一つではありませんが、徐々に準備を進めるためにも、親子双方が元気なうちに、親の家の「片づけ」について話し合うことをお勧めします。親の考えを聞きながら、できれば親戚も交えて、家そのものをどうするのか、資産をどのように残すのかなどを含め、具体的に話し合い、計画を立てることが大切ではないでしょうか。
介護と同様、実家の「片づけ」も家族や親戚など周囲の人の協力と理解を得ることにより、負担が軽くなります。一人で抱え込まずに、時には「片づけ」の専門業者を活用してみてはいかがでしょうか。
実家の「片づけ」は、単なるモノの整理とは異なります。親の想いの詰まった大切な品々であり、思うように進まないことがあるかもしれません。それでも「親の人生に思いを馳せ、寄り添うことができた」 「これからの自分の生き方を考える良いきっかけになった」 そんなふうに取り組むことができれば幸せですし、親世代も「後顧の憂い」が一つ減るかもしれませんね。
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